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Soly japanese only.
書き物の部屋のイメージ オリジナルと二次創作を揃えております。拙い文章ですがよろしく(^_^)!
no-imageのバナー 探偵と迷い


     9


 公一が白バイで捜索に出てから四日が経ち、五日目。
 一〇月一七日、水曜日。
 空が白み始めた頃。
 電話が鳴る。
「何時よ……」
 居間に入るなり、独りごちる人物……。
 入った直ぐ横には、大画面のテレビ、低いテーブルを挟んだ向かいにソファーがあり、その奥に鳴っている電話がある。
 大画面テレビの上、掛け時計を見やる女性……。
「五時じゃない……。
 もしもし?
 ……。
 どなたですか?」
 不意に思い当たり、どうした物かと頭を巡らせる。
「……お母さん。
 誰?」
「悦子。いらっしゃい」
 小声で母親がささやき、悦子を招く。
「もしもし?」
「……悦子」
「勝彦」
「……俺、もうだめだ。
 何処へ行けばいいのか。
 掴まったらどうなるんだよ。
 白バイも、かなりいるみたいだし……」
「勝彦。落ち着いて」
「……落ち付けって。
 無理だよ。
 びくついて、やばいよ」
 悦子も慌てていた。
 勝彦を落ち着かせようとするあまりに、である。
 悦子は、勝彦にも聞こえるように、深呼吸する。
 そうは言っても、勝彦の所持金とて少ない筈、時間はかけていられない。
「勝彦。よぉく聞いて」
「何をだよぉ。
 あぁ。くっそぉ〜」
「お願い、勝彦。
 深呼吸して落ち着いて、今ならまだ大丈夫かも知れないから」
 悦子は、少ない時間で、勝彦を落ち着かせるように努める。
「兎に角、これだけは教えて、何処にいるの」
「い、今は、電話ボックス」
「違うわよ。隠れた所よ。落ち着いて」
「あ、あぁ。
 寺か、何か、だと思う。
 つく……。
 プー」
「あっ。切れた。
 ど、どうしよう」

     *

──町田市、鶴間、か。……流石に、ここまでは来ていない、とは思うのだが。
 公一達は、町田市の最南端に近い場所にいた。
 移動しながら、公一がそんな想いに馳せていると、先導する白バイの左ウインカーが点滅する。
 路肩へバイクを止め、本職の元へ。
「どうしました?」
「今、連絡が入りました。
 小川勝彦さんが隠れている場所の情報が入ったそうです」
「ど、どこですか」
「寺、だそうです。
 それと、”つく”と言ったそうです」
「つく、ですか」
「はい。
 何を意味しているのか、仮に地名だとすると……」
「市内だと……。
 つくし野!」
 スロットルを開け、走り出す二台の白バイ。
──つくし野とは言ったが、町田市内でなかったら……。いや、地名でなかったら……。
 そう、公一達はつくし野としたが、果たして地名を言おうとしたのか曖昧であった。
 当然警察署でも地名なのか判断が付かなかったため、各局は最寄りの寺院、神社などを捜索した。
 公一達は、つくし野へ向かうと連絡を入れた。
 少々距離はあるが、その間に、寺院、神社の場所が知らされる。
 町田街道を戻り、南つくし野に回り込んで、つくし野に入って最初にあるのは寺院である。
 移動しているその間も、至る所からサイレンが鳴り響く。
 公一達は、出来る限り急いでいた。
 この時、町田市南部は、騒然となっていた。
 当然、追っているタルトセル側でも、事態が飲み込めている筈。
 勝負所であった。
 公一は、到着するまでの時間が、焦りからであろう、そうとうに長く感じた。
──くそ! まだか!
 焦る気持ちを押さえつつ、後に続く公一。
 間もなくして、目的の寺院に到着する。
「念のため、私が先行します。後に付いて来て下さい」
 到着する頃には、白んでいた空も、大分明るくなっていた。
 急階段を登りながら、明るいからこそ、慎重に左右にある植え込みを確認していく。
 急階段を登り切ると、立派な本堂が迎える。
 厳かな佇まいに、公一は緊張を解かれ、本堂を見詰めてしまう。
 不意に、左肩を叩かれ、我に返る公一。
「誰か来ます。隠れて」
 階段左右の植え込みに潜み、登って来る輩を待つ。
 思惑に反して、登ってきたのは白バイ隊であった。
 お互いに合図しながら、境内に散り、慎重に捜索を行っていく。
 その後、数隊の白バイが到着し、合流。
 本堂など床下がある建物の下も、十分に捜索していく。
「居たぞぉ!」
 本堂下に潜った隊員から声が上がる。
 促されて、公一達も本堂下に入る。
「小川、勝彦さん」
 声が出ないのか、頷く人物。
「よかったぁ」
「我々は、町田警察から来ました。
 あ、彼だけは違いますが」
 そんな遣り取りをしていると、表の方が騒がしくなる。
 無線から、報告が飛び交う。
 どうやら、タルトセル側も、辿り着いたようである。
 表では、格闘が繰り広げられているようであった。
 本堂下に入った面々は、勝彦の安全優先のため、その場を動くことが出来なくなった。
 そして、とうとう発砲音が響き渡る。
「どちらでしょうか?」
「我々は、所持しておりませんので、相手側だと」
「それでは、今しばらく出られないですか」
「そうなります。小川さんの安全が第一ですから」
 白バイ隊も、続々と到着している。
 飛び交う報告では、人数的に五分と言ったところのようだ。
 しかし、発砲があったため、迂闊に白バイ隊員も手が出せなくなり、膠着状態となる。
「あ、あの」
「はい」
「た、助かります、よね」
「大丈夫です。
 こちらに向かっている警官は、多数いますから」
 その間も、無線からいろいろな報告、連絡が飛び交っている。
 その中に、聞き取りにくかったが、警官が到着した旨の報告が聞こえた。
「ちょっと、様子を見てきます」
 危険ではあるが、この状況では、目視が確実である。
 表が何とか見える位置に移動すると……。
「あ、あぁ。
 警官が来ています。
 もう少しの辛抱です」
 その言葉に、本堂下の面々は、人心地着いた。
縦書きで執筆しているため、漢数字を使用しておりますことご理解ください。
下記、名称をクリックすると詳細を展開します。
おがわ かつひこ
小川 勝彦
西暦1980年 9月10日生まれ。身長/体重:178㎝/60㎏
学年:社会学部 3回生

 小川勝也家長男として生まれる。
 本質的には優しいのだが、その反発として、ムラが多く、喜怒哀楽を激しく表現しすぎる。その為、周りの人を困らせることが多々ある。
 嫌いなものは肉類。好物は、焼き魚。
ささき えつこ
佐々木 悦子
西暦1980年 8月 8日生まれ。身長/体重:160㎝/45㎏/スリーサイズは未定
学年:社会学部 3回生

 佐々木玲児家次女として生まれる。
 気性の激しい、とまではいかない荒さがある反面、優しさもある。また、いわるゆ面倒見の良いところを持っている。
 嫌いなものは焼き魚関係、だが、好物は、刺身。
うめだ こういち
梅田 公一
西暦1971年 7月 1日生まれ。身長/体重:170㎝/66㎏
職業:私立探偵。古屋探偵事務所探偵

 梅田家次男として生まれる。
 ありがちな次男の性格である、自分勝手さが時折顔をのぞかせる。が、新米の頃に、自分勝手な性格が前面に出たために、仕事は失敗、当時の探偵長を始め所長にまで迷惑をかけた経緯があり、その性格が出ていないか自己分析した上で行動できるように訓練をし、今では、殆どのところを制御している。
 好き嫌いはないものの、やはり一番の好物は、母の手料理である。が、難点は、ビール好きであること、ビールであれば底なしのように飲む。
ささき よしえ
佐々木 悦枝
 悦子の母。
 無言電話に出るが、それが、小川勝彦だと直感し、小言もなく悦子に変わるところなど、優しい母が垣間見える。
佐々木家
 所在地は、町田市小川。
 閑静な住宅街の一角にあり、父:佐々木玲児、母:悦枝、長女:玲子、長男:悦児、次女:悦子の5人家族である。
町田市
 東京都の多摩南部に位置付けられている南にせり出した一体で、神奈川県に隣接した市。
 作品年代においても、駅周辺はかなり発展している。
 しかし、駅を離れると田園風景が広がっている。



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