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Soly japanese only.
書き物の部屋のイメージ オリジナルと二次創作を揃えております。拙い文章ですがよろしく(^_^)!
no-imageのバナー カチ、カチ
 一三:〇〇にはまだだが、昼も終わりに近い時間。
 二人の男が扉を開けて入る。
 立て付けがよいのか、その扉は、軋み音一つしない。
 ここは喫茶店。
 入って来た二人は、共にスーツ姿。
 所謂、サラリーマンであろう。
 その二人がしている会話、何故か店内に響いている。
 別段、その二人が大声で話している訳ではない。
 逆である。
 店内の方が静かなのである。
 では、客がいないのか、と問えば、いる。
 満席ではない。それでも、半分ほどが埋まっている。
 それから数分が経って……。
 来店に気が付いたウエイトレスが、二人のいる出入り口にやってくる。
「……」
 ウエイトレスは男達を向いて、いるが、伏し目がち、いや、注文取り端末を見て、何やら指を動かしている。
 声を発することもせず。
「……あの」
「……」
「……客だぞ?」
「……」
 一切声を発しないウエイトレス。
 ひたすらに、端末の操作を続けている。
「どうするよ」
「どうったって、目の前に立たれちゃ席にも座れなし」
「待つか?」
「ま、ちょっとは良いか」
 二人は、徐に待ち席に腰を下ろす。
 その様子を見ているのかいないのか、ウエイトレスはひたすらに端末の操作を続けている。
 と、何かあったのか、その場を離れる。
「……何だ?」
「分かるか、そんなもの」
「……確かに。
 で、どうする?」
「知るか。
 ……それはそうと、あの新人だがなぁ……」
 二人の男は我関せずなのか、別の話を始める。
 静まりかえった喫茶店で……。

     *

 数分経った。
 しかし、相変わらず店内の音は、来店して待ち続けている男二人の話し声だけである。
 と、その会話を遮るように、入り口の扉が開く。
 入って来たのは女性。
 その女性は、常にそうなのであろう、携帯型の端末を操作している。
 と、間髪を入れずに、先ほどのウエイトレスがやってくる。
 驚く二人をよそに、二人に接したときと同じ、注文取り端末で何やら操作をしている。
 やはり、会話はない。
 しかし二人の時とは違い、女性客の案内を始める。
「おい!
 ちょっと待て、俺たちの方が先だぞ」
 その剣幕に、ウエイトレスと女性客の動きが止まる。
「……」
 しかし、声を発することなく、男二人に向き直り端末の操作を始めるウエイトレス。
 痺れを切らした男が……。
「いい加減にしてくれ!
 俺たちをなんだと思っているんだ!
 店長を出せ! 店長を!」
「まぁ、怒るなよ。
 何故喋ってくれないんだ? 教えてくれよ」
 その問いに対して、ウエイトレスは……。
 やはり端末の操作をするだけである。
「……何故?」
 しばらく対峙するも、二人の男の反応が無いためなのか、ウエイトレスは女性客の案内を再開する。
 二人は呆然とし、立ち尽くすのみであった。
 会話が成立しないことに……。
 いや、会話にならないことに……。
 この時、静寂と思われたこの店で音が聞こえ始めた。
 いや、二人が来る前からしていたのかもしれない。
 微かだが、確かに聞こえる。
 カチカチ。
 カタカタ。
 と言った静寂でなければ聞こえない音が……。
「……なんだ?
 この音は?」
「何?
 聞こえないぞ」
「そうだったか?
 ……やばいな、そろそろ戻らないと」
「もう時間か?
 変な時間潰しになったな。
 行くか」
「そうするか」
 男二人はその店を出る。

     *

 社に戻った二人。
 何やら騒ぎが起こっていた。
 目の前を通った若い社員を捕まえ……。
「何かあったのか?」
「あ、サーバーがダウンしたんですよ」
「はぁ?」
「何で」
「詳しくはまだ。
 すいません、サーバールームに行きますので」
「あ、悪い」
 ため息を漏らす二人。
 何故か散々な気がしてならなかった。
「……さっきの茶店は変だったし……」
「……そうだな……」
 そう会話しながら自席に座る二人。
 PCのロックを解除すると……。
「おっ、メールか……。
 何々……」
 ガタッ。
 椅子を倒す勢いで立ち上がる二人。
 その表情は強ばり、恐怖に怯えた様子。
「な、何なんだ。
 これ……」
 そこには、一言二言、いや、件名のみのものすらあった。
 件名で意志を伝えるもの、内容で繰り返し伝えるものなどがあった。
 差出人は全てが同一のアドレス。
 所謂スパムメールなのであろうが、二人共……。
「このアドレスは、見覚えない。
 いやいや、社のアドレスは、仕事以外に使ってないんだがな」
「当たり前だろ」
「どうしたんですか?」
 と、いつ戻ったのか若手が席に着いていた。
「おぉ。戻ってたのか。
 見てくれよこれ」
 どれどれと男のPCを覗き込んで。
「うわぁ。
 酷いですね」
「だろ?」
 クスッ。
 向かいにいたもう一人の男は、一瞬、若手が笑ったように見えた。
「今……」
「……何か?」
 その眼光が鋭く、男は怯んでしまった。
「いや。
 良い」
「そうですか」
 後輩の隣にいる男は、”どうするんだ? これ”などと騒いでいた。
 と、あることに気が付き。
「! サーバーダウン。
 これか?」
「だとしたら……」
「……呼び出されるじゃないか」
 その直後。
 上司が徐に手招きする。
 渋々と従う男達。
 その後ろ姿をほくそ笑んで見送る者がいた。
「邪魔した罰ですよ」

〜完〜
 落ちの部分を加筆しました。
 気がついてはいたのですよ、前のままですと、読み手が核心部分に近づけない、と言うことが。
 そこで、手を打とうと。
 ですが、全体的には問題ありませんでしたので、加筆と相成りました。
 どうですか?
 ちょっとは、言いたいことが伝わったのではないでしょうか?

 それでは、いつもの。
 もし、よろしければ、感想など頂けると嬉しいです。
 何年か前に思いついたストーリーです。
 ヒントになったのはお分かりの方もおられると思いますが、携帯電話が高性能化してから、食事中でも必ず携帯で何かを見ている者が身近にいたのです。
 一緒に、食事に出かけたにもかかわらず。当然、会話はなし。何のために一緒に食事しているんだか・・・。
 そんなところから、こんな若いのが増えたらどうなるんだろうか、とちょっと想像してみました。とは言え、少々想像がすぎているかもしれません。
 それでも、あり得ない、とは言えないかもしれませんよ。

 もし、よろしければ、感想など頂けると嬉しいです。


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